X線を透しにくい”ヨード造影剤”という無害の薬を血管内に注入し、血管の形態、血流状態を連続的に撮影することで動脈や静脈の病変を診断する手法が血管撮影検査です。
血管撮影検査では股関節付近にある大腿動脈(静脈)、または腕の動脈(静脈)に針を刺し、そこからカテーテルと呼ばれる直径数mm、長さが50~100cmの管を血管内に挿入します。そのカテーテルの先を目的の血管まで送り込み、造影剤を注入して連続的に撮影をします。近年ではこの血管撮影技術が発展し診断と治療が可能となっています。治療ではカテーテルをがんなどの病変近くまで挿入し、造影剤の変わりに抗がん剤や塞栓物質を直接注入し病変部位を治療します。この治療法をがんに対する血管内治療と呼びます。器材の開発と手技の高度化によって今まで外科手術でしか治療できなかった病変も血管内治療の対象となっています。
当院には血管内治療のスペシャリストであるIVR専門医が2名在籍しています。
日本での罹患率が高い肝細胞がんについては、手術やラジオ波を用いた焼灼術が適応とならない多発あるいは巨大な病変に対して、肝臓を対象に行う血管内治療:TACE(肝動脈化学塞栓療法)を当院では積極的に行っています。また転移性肝がんに対しては肝臓から股関節付近の血管にカテーテルを埋め込んで定期的に抗がん剤を注入する動注化学療法を施行する場合もあります。
IVR専門医:中村仁信 杉浦孝司
当院の血管内治療センターは被ばく線量低減推進施設に認定されています。
IVRを確実に成功させるためには、カテーテル操作を行う医師の高い技術力と、もうひとつ欠くことのできないのがX線を用いた透視や撮影技術です。体外から見ることができない血管に対し、さらに複雑に分岐する血管の中から目的のみの血管にカテーテルを進めるためにはX線透視や撮影なくしてはなにも出来ません。しかしここで問題となるのがX線被ばくです。いかに少ないX線でIVRに必要な映像情報を提供するかは日々の精緻な機器管理が必要となります。今回、全国循環器撮影研究会より認可いただいた「被ばく線量低減推進施設」はこのX線管理がなされ確実に被ばく低減が実施されていることの認定証です。